日本には四季がある

「日本には四季があるから素晴らしい」
とあなたが言う

「ええ ですけど四季は日本にだけでなく色々な国にあるんじゃないですか?」

「四季は世界中にあるかもしれないが 春に桜を観に行き 季節の移ろいを愛でたりするのは日本人独自の感覚で他の国にはあまりないだろうね」

「なるほど ということは四季というものが実際にあるかどうかじゃなく四季という概念を楽しむことができるかということですね」

「そういう繊細なところを楽しめるのが日本の文化のいいところだね」

「それでしたら他の国の人達は四季をどう楽しんでいるんでしょうか?」

「あのー お話し中すみません 一杯おかわりを頼んでもいいでしょうか?」

「あゝすみません もちろんです 同じものを モヒートですね 話に夢中になってしまい申し訳ありません 今お作りします」

「わたくしのよくないところでして 夢中になってしまうと他のことが見られなくなってしまうのです 大変お待たせしました ところでこちらで3杯目になりますがモヒートお好きなんですか?」

「夏はこれですね と言っても味は好きじゃないんです というよりよく解らないんです
親の仕事の影響で子供の頃から世界中を転々としていて これもキューバで昼から大人達が延々と飲んで踊っているのを見てそれでいつかこうしてみたかったんです」

「本場の美味しいモヒートをご存知なんですね」

「いえいえ 飲んではいませんので本場の味は知らないのです なので美味しいとか好きって郷愁なんだなって思います」

「郷愁ですか?」

「郷愁というと大げさですが 懐かしいというか知っていないと 自分の中に無いものってすんなり自分に入ってこないんですよね
ですから僕の場合モヒートはキューバで実際飲んでないから本場の美味しさは知らないんですけど 知りたいと思って飲んでいます
好きになった彼女をよく解らないけど理解しようとしている感じでしょうか
正直言うとまだ理解出来ていないのですがだいぶ慣れて来たなという感じです 笑」

「それに彼女が言うんです」

「彼女? モヒートのことですか?」

「解りにくくてすみません これは実際の僕の恋人の彼女が言うんです」

『ねえ フィンランドには雪の呼び方が11種類もあるって知ってた? わたしは知らなかったわ 雪の呼び方を11種類もつけるなんて想像も出来ないけどそれってとっても素敵なことじゃない? 一つの事象をそんなに楽しめるってわたしは好き』

『あなたよく美味しい不味いって簡単に言うけど わたしはフィンランドのお料理を食べた時美味しいって言えなかったけど 簡単に不味いなんて言いたくなかったわ』

『だって雪の種類を11種類思いつく素敵な人達の食べているものよ わたしが知らなくて わからないだけかもしれないじゃない そうじゃないかもしれないけど11種類不味いを言えるくらいまでは食べるつもりよ
あなたの言う美味しいなんて郷愁みたいなものよ 懐かしい 知っている それだけ それを悪いなんて言ってないわよ もちろんわたしにもあるわ
ただわからないものを不味いと言うのは安易過ぎないかしら とわたしは思うの』

「なるほど ですから先ほど郷愁と」

「そうなんです
だからさっきのも全て彼女の受け売りなんです
偉そうにすみません 笑」

「いえいえ問題ないですよ
モヒート飲み干されてるようですが
もう一杯 郷愁に近づきますか? 笑」

「有難うございます そうしたいのは山々ですが 実は彼女との待ち合わせにもう30分遅れてるんです」

「そうだったんですか!?
それはまた申し訳ありません」

「とんでもない 話始めたのは僕ですから
彼女が念願のギャラリーをオープンしまして このあとそのお祝いに彼女のお気に入りのシチリア料理のお店で食事をする予定です
そこのシェフは無愛想で僕にはいまいち良さは判らないのですが 彼女が好きなら 僕も分かって好きになりたいなと 僕が知らないだけかもですし」

「簡単に決めつけるなと」

「ええ その通りです
それと彼女に言われたことがあるんです」

『あなたはいつも時間に正確で待ち合わせにも遅れて来たことなんて一度もないけど たまには遅れて来てもいいわよ わたし待つのって嫌いじゃないわ その間に色々考えるの 待っている時間もデートの内よ
それにどんなに用意周到に準備しても予定通り行かないことってあるわよ』

『たとえばBARで横のお客さんがあなたの国の話をし始めた時とかね』

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